大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 平成10年(ワ)18445号 判決 2000年6月27日

原告

佐々木常雄

ほか三名

被告

高橋めぐみ

ほか一名

主文

一  被告らは、連帯して、原告佐々木常雄及び同佐々木睦子に対し、それぞれ九六一万六五七六円及びこれに対する平成九年五月三一日から各完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告らは、連帯して、原告佐々木麻実子及び同佐々木奈己に対し、それぞれ六〇万円及びこれに対する平成七年八月二六日から各完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

三  原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

四  訴訟費用は、これを四分し、その三を原告らの負担とし、その余を被告らの負担とする。

五  この判決は、原告らの勝訴部分に限り仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

一  被告らは、連帯して、原告佐々木常雄及び同佐々木睦子に対し、それぞれ三四九三万九九八八円及びこれに対する平成九年五月三一日から各完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告らは、連帯して、原告佐々木麻実子及び同佐々木奈己に対し、それぞれ五〇〇万円及びこれに対する平成七年八月二六日から各完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、後記の交通事故によって死亡した訴外亡佐々木潤(昭和五一年二月二九日生、当時一九歳、以下、「訴外人」という。)の両親及び妹らが、被告らに対して、訴外人の死亡による損害の賠償を求めている事案である。

一  前提となる事実

1  交通事故(以下、「本件事故」という。)の発生

(一) 発生日時 平成七年八月二六日午後七時〇三分ころ

(二) 事故現場 東京都小笠原村父島字奥村奥村野積場用地前路上(以下、「本件事故現場」という。道路の状況等については、別紙見取図参照)

(三) 加害者 普通貨物自動車(品川四〇も一四五五、スバルサンバー、サンボックス型、以下、「加害車両」という。)を運転していた被告高橋めぐみ(以下、「被告高橋」という。)

(四) 被害者 自転車(以下、「被害車両」という。)に搭乗していた訴外人

(五) 事故態様 交通整理の行われていない本件事故現場である変形交差点(以下、「本件交差点」という。)を加害車両が右折した際に、右折先道路を交差点に向かって進行してきた被害車両と衝突した。

(六) 結果 訴外人は、本件事故により、本件事故当日、父島所在の小笠原村診療所において、失血死した。

2  責任原因

(一) 被告高橋は、本件交差点を右折する際に、進路前方の安全確認が不十分のまま右折したため、被害車両の発見が遅れ、右車両と衝突したものであるから、民法七〇九条により、本件による原告らの損害を賠償する責任がある。

(二) 被告南雲春雄は、加害車両の保有者であり、加害車両を自己のために運行の用に供していたものであるから、自動車損害賠償保障法(以下、「自賠法」という。)三条により、原告らの人的損害を賠償する責任があるとともに、被告高橋を自己の経営する飲食店(パブ)の従業員として使用し、本件事故は、被告高橋が、右飲食店の予約客を迎えに行く途中で惹起されたものであるから、民法七一五条により、原告らの損害を賠償する責任がある。

3  相続

原告佐々木常雄(以下、「原告常雄」という。)及び同佐々木睦子(以下、「原告睦子」という。)は、訴外人の両親であり、訴外人の本件事故による損害賠償請求権を各二分の一ずつの割合で相続した。

なお、原告佐々木麻実子及び同佐々木奈己はいずれも被害者の妹である。

4  損害のてん補

原告常雄及び原告睦子は、加害車両の自賠責保険により、平成九年五月三〇日、本件事故の賠償金として金三〇〇〇万二六〇〇円の支払いを受けた。

二  原告らの主張する損害額

1  訴外人の逸失利益 五一二六万三〇四〇円

訴外人は、平成七年三月に秋田県立秋田高校を卒業した本件事故当時一九歳の男子であるから、六七歳までの四八年間就労可能であり、平成八年の賃金センサス男子労働者の産業計・企業規模計・学歴計の全年齢平均賃金を基礎収入とし、生活費控除率五割、年五分の割合でライプニッツ係数を用いて中間利息を控除して現価を求める。

五六七万一六〇〇円×(一-〇・五)×一八・〇七七一=五一二六万三〇四〇円

2  慰謝料 三〇〇〇万円

訴外人は、前途有為の若者であり、アメリカ留学を夢見て準備をしているときに本件事故に遭って死亡したもので、その無念さは察するに余りある。

慰謝料としては三〇〇〇万円を下ることはない。

3  葬儀費用 二〇〇万円

4  交通費・宿泊費 五二万〇八八〇円

訴外人の死亡を知り、原告らを含む訴外人の近親者が遺体の引き取りと状況の把握及び慰霊のため、本件事故現場である小笠原村に駆けつけた際に要した費用である。

5  物損 三万円

本件事故により全損した訴外人の乗っていた自転車の時価である。この自転車は変速機の付いたスポーツ仕様の高級車である。

6  弁護士費用 八〇〇万円

7  損害額合計 九一八一万三九二〇円

8  損害のてん補

原告常雄と原告睦子は、前記のとおり自賠責保険から平成九年五月三〇日に三〇〇〇万二六〇〇円の支払いを受けたが、事故日から右支払日までの損害金八〇八万七一七一円を充当し、その余を元本に充当すると、残額は六九八九万八四九一円となる。

9  原告常雄及び原告睦子の請求額

残額六九八九万八四九一円のそれぞれの二分の一の内、請求の趣旨のとおり三四九三万九九八八円及びこれに対する平成九年五月三一日から年五分の割合による遅延損害金を請求する。

10  原告麻実子及び原告奈己の請求額 各五〇〇万円

原告麻実子及び原告奈己は、訴外人の妹であるが、同原告らにとっては訴外人は実質的には父親的な存在であったため、訴外人の死亡により、同原告らは大きな精神的損害を受けており、これに対する慰謝料としては各五〇〇万円を下ることはない。

三  争点

1  過失相殺

(一) 被告らの主張

本件事故は、訴外人にも以下のとおりの過失相殺事由があるから、八〇パーセントの過失相殺をすべきである。

すなわち、本件事故は、訴外人が、夜間無灯火の自転車に乗って、一時停止規制のある交差点で一時停止せずに、前方の交差道路を注視せず、右側通行していたところ急に高速度で左に進路変更したために起きたものであるから、八〇パーセントの過失相殺がなされるべきである。

(二) 原告らの認否及び反論

本件は過失相殺がなされるべき事案ではない。

(1) 訴外人の乗っていた自転車に照明設備がなかったことは認める。

しかし、本件事故当時、本件事故現場付近は街頭によってかなりの明るさであったし、現に被告高橋は訴外人を発見している。

したがって、無灯火と本件事故発生とは因果関係がなく、過失相殺の要因とはならない。

(2) 訴外人の進行していた道路には一時停止の標識があることは認め、訴外人が一時停止をしていないことも考えられる。

しかし、被告高橋が、本件交差点を違法な小回りで右折し、交差道路の反対車線に入ったために被害車両と衝突したという本件事故態様に鑑みれば、訴外人が一時停止しなかったことは本件事故の原因になっていない。したがって、過失相殺事由とはならない。

(3) 前方不注視との点も、本件の高橋車両のように、右折して反対車線に進入してくる車両があることを予期することはできず、このような予期できないことを予期することを前提に、前方を注視すべきであるとは言えず、法的な意味で前方不注視の過失は存在しない。

(4) 訴外人が右側を走行していて、急に高速で左に進路変更したとの点は否認する。

訴外人が、被害車両に乗って道路左側を走行してきたところ、被告高橋が右折して反対車線に進入してきたために正面衝突したものである。

したがって、右側通行とか急激な進路変更などは存在しない。

また、本件事故当時の被害車両の速度は、衝突地点と訴外人が転倒した地点の距離が約一二メートルであり加害車両の速度が時速二五キロメートルであったから、訴外人の乗っていた自転車は時速約一五キロメートルで走行していたことになり、決して高速とは言えない。

2  損害額及び損害のてん補

被告らは、原告らの主張する各損害額について争っている。

また、被告らは、被告南雲において、以下の支払いをしたとして、損害のてん補として扱うべきであると主張している。

(一) 葬具使用料 二一万七〇〇〇円

(二) 佐々木家小笠原宿泊料 二七万八一〇〇円

(三) 葬儀にかかる佐々木家飲食代 七万五四三四円

第三当裁判所の判断

一  争点一(過失相殺)について

1  被害車両が無灯火であった点について

原告らは、訴外人の乗っていた自転車に照明設備がなかったことを認めながらも、本件事故との因果関係を争っている。

しかし、近くに街頭があったとしても、また、現実に被告高橋が被害車両及び訴外人を発見したとしても、本件事故発生時点における本件事故現場の明るさは昼間と比べれば格段に暗いことは明らかであり(甲第三号証、第四号証、乙第一号証の二)、本件自転車の灯火が点灯されていれば、被告高橋において、より容易に(すなわちより早期に)被害車両を発見することが出来たものと推認されることは当然であり、被害車両の無灯火が被告高橋の被害車両の発見の遅れに寄与しているものと考えざるを得ない。無灯火との点は過失相殺の考慮事由と考えるべきである。

2  訴外人が一時停止をしていないことについて

被告高橋は、被害車両が一時停止規制に反して、停止線において停止することなく走行してきた旨一貫して説明している(被告高橋本人、甲第九号証、乙第一号証の二、三、第一号証の一〇)ところであり、これに反する証拠はない。

原告らは、この点も本件事故とは因果関係がないと主張しているが、かりに、訴外人において、停止線において一時停止していれば、本件衝突地点において加害車両と被害車両が衝突することはなかったし、また、被告高橋または訴外人において、本件衝突を避けるべく回避行動を取れたものと推認できる。

訴外人が一時停止規制に反して一時停止していないことも過失相殺事由として考慮すべきである。

3  前方不注視の点について

本件においては、後述のとおり、被告高橋に前方不注視の過失があって被害車両の発見が遅れたことは明らかであるが、訴外人においても、右折してくる加害車両に対して適切な衝突回避措置を講じていない(具体的な態様については後述のとおり。)ことから、加害車両の発見の遅れ、すなわち前方不注視が推認される。

原告らは、加害車両が右折して反対車線に入ってきたことを取りあげて、このような予期できない車両に対する前方注視義務はないと主張するようであるが、右主張自体採用できない。

訴外人が、前方注視という極めて基本的な注意義務を果たしていれば、ライトを点灯させて前方から右折してくる加害車両を認識できないはずがなく、認識できれば、当然事故回避の措置を早期に執ることが可能であったのである。この点も、過失相殺事由と考えられる。

4  訴外人が右側通行をしてきて急に高速で左に進路変更したとの点について

(一) この点原告らは、具体的な事実自体を否認している。

そして、訴外人は、訴外人の進行してきた道路(港湾通り)の左側を通常の走行方法で走行していたところ、被告高橋が右折に際して小回りをして港湾通りの反対車線に進入してきたために本件事故が起きたものであると主張している。

原告らは、そのように考える理由として、訴外人の寝泊まりしていた寮が訴外人の進行方向左側にあり、そのような寮から出て本件事故現場を左折するとすれば、ずっと左側を走行してくるのが普通であること、また、加害車両と被害車両の衝突の仕方は正面衝突であり、しかも、被害車両である自転車のハンドルはほぼ一八〇度右回りに回転していることを強調している。

(二) しかし、港湾通りは、原告らも認めるように、訴外人の進行方向右側に路側帯があり、街頭も右側に多い(甲第三号証、第四号証等)。したがって、訴外人が照明設備のない被害車両に乗って移動する際に、より走行しやすい右側通行を走行することは十分ありうることである。

また、被害車両の損傷状況についても、原告らが主張するように、右損傷状況からすれば、正面衝突したことは肯定できるが、だからといって、被害車両が港湾通り左側を走行してきたという客観的な裏付け証拠とはなり得ない。

乙第一号証の二(実況見分調書)別紙の現場見取図上のモデル図を見ても、被告高橋の説明するような状況(被告高橋が湾岸通りから港湾通りに右折した際に、訴外人が港湾通りの訴外人からみて右側を走行しており、これを見た被告高橋が加害車両のハンドルを右に切って衝突を回避しようとしたところ、訴外人が左ハンドルを切ったため、正面衝突してしまった。)は十分起こりうることである。

むしろ、原告らの言うように、訴外人がずっと左側通行して来たとすると、右折してきた加害車両とは被害車両の左側面で衝突するのが通常であると思われるのに、現実にはほぼ正面衝突であると認められるのはやや不自然である。

また、ハンドルが右回りに回転しているというのは、確かに右回りの力が作用したものと考えられるが、しかし、本件衝突時点において、自転車である被害車両にどのような力が作用したかは、自転車のハンドルが自動車のハンドルと異なり不安定であり、自転車の路面に対する立っている角度等の影響もあって、一概に加害車両と被害車両の位置関係や車両の向き等を判定すること自体がきわめて困難なことである。

以上によれば、原告らがあげる理由は、被害車両が港湾道路の左側を走行してきたと認定する根拠としては非常に薄弱である。

(三) これに対して、被告高橋の供述は、事故直後の実況見分時の指示説明から法廷における説明に至るまで、訴外人が右側通行しており、自分がハンドルを右に切って衝突を回避しようとしたら、被害車両が訴外人からみて左に進路を変更し衝突に至ったとの点で一貫している。

原告らは、被告高橋の右説明が自己の責任を軽減させるための虚偽の説明であるとしているが、事故直後の実況見分時において、自己の責任を軽減するためにこのようなやや複雑な説明を思いつくかどうか極めて疑問である。しかも、被告高橋は、事故直後警察官が事故現場に到着する前には、事故により倒れていた訴外人の顔をのぞき込んで「ごめんなさい。死なないで。」と自己の責任を認めるとともに、訴外人の存命を祈る文言を繰り返していたというのであり(甲第一〇号証の田中旺子の警察官に対する供述調書)、そのような被告高橋が、警察官が事故現場に到着するや自己の責任を軽減するために虚偽の説明を行うというのは想定しにくい。

したがって、被告高橋の事故直後の実況見分時の指示説明は、事故直後で混乱していた点もあり得るが、基本的には自らが体験した事実をほぼ忠実に説明したものと考えられる。

(四) そして、右説明及びその後の被告高橋の供述によれば、被告高橋が、本件交差点を右折する際に、右折する先の安全確認を十分に行わなかった過失が認められる(被告高橋が被害車両を現認したのは一九・五メートルに近づいてからであり、視認実験によれば約三九メートル先から認識し得たというのであるから、発見が遅れたことは否定できない。甲第三号証、乙第一号証の二)一方、被害車両が右側通行をしており、被害車両を避けるためにさらにハンドルを右に切ったところ(このハンドルの切り方は、訴外人の動静に対する注意義務との関係で問題があり、また、警笛を鳴らして訴外人に危険を察知させるなどの措置も執っておらず、これらの点も本件事案の過失割合を考える上で考慮すべき事情である。)、訴外人も左にハンドルを切って両車両が接近し、ついには衝突したものと認めることができる。

原告らは、乙第一号証の二別紙の現場見取図の加害車両の位置及び向きを厳密に捉え、そもそも右折を始めた時点から港湾通りの反対車線に入るべく進行していたものと主張しているが、右見取図において、車両の向きが現実の説明を極めて正確に記載されていると考えることは出来ない。右見取図においては指示された地点間の距離や路面上の痕跡の状況などは正確であろうが、車両の向きまで厳密に測定し、記載されているとは考えられず、また、車両が右折なり左折なりする場合は、円弧を描いて走行するのが通常であるのに、右見取図では右折し始めの地点から直線的に記載されており、作図自体が不自然である。

なお、訴外人が高速で走行していたとの点は、被害車両が自転車であって、四輪車である加害車両との関係で高速と評価するほどの速度は出せないから、この点をさらに過失相殺の一事情とすることは相当ではない。

4  以上、被告高橋の過失の内容、訴外人側の過失相殺を相当とする諸事情、さらには、本件交差点がやや変形交差点で、被告高橋の走行してきた方向から右折方向への見通しは、雑木林や雑草などで悪いこと(乙第一号証の二)等の道路状況をも総合考慮し、本件については、四割の過失相殺をするのが相当である。

二  争点二(損害額)について

損害額の認定については、冒頭に裁判所の認定額を示すとともに、括弧内に原告らの請求額を示すこととする。

1  訴外人の逸失利益 五〇六一万四〇七二円(五一二六万三〇四〇円)

訴外人の年齢、経歴に照らし、原告らのこの点に関する主張は相当として認めることができる。ただし、賃金センサスの年度については、事故時のもの(平成七年のものは五五九万九八〇〇円)を基準とする。計算式は以下のとおり。

五五九万九八〇〇円×(一-〇・五)×一八・〇七七一=五〇六一万四〇七二円(小数点以下切り捨て。以下同じ。)

2  慰謝料 二〇〇〇万円(三〇〇〇万円)

訴外人は、前記のとおり、独身男性で、前途有為の青年であるにもかかわらず若くして死亡するに至ったことなどの諸事情を総合考慮すれば、本件訴外人の慰謝料(訴外人の相続人たる両親の固有の慰謝料をも含む。)としては二〇〇〇万円をもって相当と認める。

3  葬儀費用 一五〇万円(二〇〇万円)

弁論の全趣旨によれば、訴外人の葬儀費用として相当額を要したものと推認されるところ、原告らが被告らに請求できる金額は、一五〇万円とするのが相当である。

4  交通費・宿泊費 三二万〇九八〇円(五二万〇八八〇円)

原告睦子の本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、原告らが訴外人の死亡を知り、本件現場である父島まで秋田または鎌倉から駆け付け、帰宅した費用として訴状別紙の旅費計算書(旅費分に限る。)のとおり要したものと認められる。

ただし、加害者が賠償を要する範囲としては、訴外人の家族である両親、妹らに要した分に限られると解されるので、合計三二万〇九八〇円となる。

5  物損 一万円(三万円)

本件事故により全損した訴外人の乗っていた自転車は、変速機の付いたスポーツ仕様のものであり(甲第八号証)、事故当時の時価としても少なくとも一万円はするものと認定するのが相当である。

6  以上の小計 七二四四万五〇五二円

7  過失相殺 相殺後の金額四三四六万七〇三一円

前述のとおり、本件については四〇パーセントの過失相殺をするのが相当であり、以上の損害費目はすべて過失相殺の対象となる。

したがって、過失相殺後の金額は四三四六万七〇三一円となる。

8  弁護士費用

原告らが原告ら代理人に対して本件訴訟の提起、追行を依頼したことは当裁判所に顕著な事実であるところ、本件事案の内容、後記の認容額及び審理経過に照らし、被告らに請求できる本件についての弁護士費用としては、合計二〇〇万円(原告常雄分が一〇〇万円、原告睦子分が一〇〇万円)が相当と認める。

9  遅延損害金と損害のてん補

右相殺後の金額に弁護士費用を加えた金額(四五四六万七〇三一円)に対する、被告らの主張する損害のてん補の適否について検討する。

被告らが主張する、葬儀関係費等のてん補が実際にてん補として扱うことができるかについては、乙第六号証の各領収書によれば、葬具等使用料として合計二一万七〇〇〇円を被告南雲において支払ったことが認められ、右支払いは葬儀費用のてん補として扱うことができるが、しかし、その余の飲食代金、宿泊代金は、そもそも原告らが請求している損害に対応するものであるかどうかは疑問であって、損害のてん補と扱うことは困難である。

したがって、二一万七〇〇〇円は損害のてん補として扱い、前記過失相殺をした後の金額から二一万七〇〇〇円を控除すると、四五二五万〇〇三一円となり、これに対する自賠責保険からの支払いのあった日まで(事故日から一年と二七八日)の年五分の割合による遅延損害金の額は、一年分が二二六万二五〇一円、二七八日分が一七二万三二二〇円であるから、合計三九八万五七二一円となる。

次に、原告常雄と原告睦子が自賠責保険から平成九年五月三〇日に支払いを受けた三〇〇〇万二六〇〇円を、まず前記の損害金に充当し、残金の二六〇一万六八七九円を損害元本に充当すると、損害元本の残額は、一九二三万三一五二円となる。

10  原告常雄及び原告睦子の各認容額

原告常雄及び原告睦子は、訴外人の損害賠償請求権を各二分の一ずつを相続により取得したから、各九六一万六五七六円及びこれに対する平成九年五月三一日から完済に至るまで年五分の割合による遅延損害金を請求することができる。

11  原告麻実子及び原告奈己の慰謝料

原告麻実子及び原告奈己も、原告常雄及び原告睦子と同様家族であった訴外人の死亡により、右両親にも比肩する程度の精神的な打撃を受けたものと認められる(原告睦子本人、甲第一四号証等)から、固有の慰謝料請求権を肯定できる。

原告麻実子及び原告奈己の右精神的損害に対する慰謝料としては、本件事案の内容等も考慮し、各六〇万円が相当である。

したがって、原告麻実子及び原告奈己は、それぞれ六〇万円及びこれに対する平成七年八月二六日から完済に至るまで年五分の割合による遅延損害金を請求できる。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 村山浩昭)

現場見取図

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例